「うつ」と「更年期障害」仕組みは一緒!

 

 

はじめに

 

「社員の斎藤(仮名)ですが、休みがちだったのがまったく休まなくなりました。うつで、病気療養させることも検討していましたが、あれほど口数も少なかった彼女が、とっても明るくなって驚いています。ありがとうございました。」

 

斎藤さんは20代後半の女性で、今の会社に勤めて3年になります。

 

当初からうつっぽく休みがちだった彼女でしたが、勤務態度はまじめでした。が、3年目に入ると、有休休暇をはるかに超えて休むようになり、病院にかかるようになりました。

 

「2~3年は覚悟して、ゆっくり治していきましょう。」

はじめて受診したとき、彼女はそう言われたそうです。

 

しかし、2か月たっても、3か月たっても一向に症状は改善しなかったため、彼女はそれを医師に伝えたそうです。すると・・・

 

「一生、うつと付き合う人もいるんですよ!」

その言葉に、彼女は悩みました。

 

なぜなら、彼女のお母さんも同じだったからです。2年ほど前に更年期障害とされたお母さんでしたが、未だに塞ぎがちでほとんど外出できない生活が続いていたからです。

 

そんなこともあり、彼女は社長に勧められて私を訪ねてきました。そして、彼女はもちろんですが、社長も驚かれるほど順調に明るく元気になっていきました。

 

そんなとき、「お母さんが更年期障害で塞ぎがちで…」という相談があったのです。

 

「斎藤さん、家族だもの、ほとんど同じもの食べてきたんでしょ。ならば、私からすれば斎藤さんの〝うつ〟も、お母さんの〝更年期障害〟も原因は同じですよ。」

 

そんなお話をした記憶がありますが、私の想像は正しかったようで、斎藤さんのお母さんもまた、元気に外出ができるようになったそうです。

 

「うつと更年期障害が、仕組みが一緒!」

さて、これはいったいどういったことなのか?

 

この小冊子は、うつや不安、イライラ、更年期障害、生理前症候群などでお悩みの方、ご家族の方には特に重要です。

 

ぜひ、参考にしていただき、お役立ていただければ幸いです。

 

 

第一章 脳というハードウェア

 

好きな人を思うと胸がドキドキする。

 

誰もがいちどはするであろうこの経験からか、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスは心が胸(心臓)にあると考えました。一方で、アリストテレスとほぼ同時期をすごした医術の祖、ヒポクラテスは心が脳にあると考えました。

 

そういった意見から約2400年。そもそも場所探しをするのがマチガッテいると言ったのが、イギリスの哲学者・ギルバート・ライルでした。

 

彼は、心の場所探しをするのは,大学を構成する建造物と大学という機能を同一視することと同じと主張しました。要は、脳というハードウェアを基盤とし、成立するソフトウェアが心だというのです。

 

ならば、次のようには考えられないでしょうか?

 

脳が正常にはたらいたとき、その心は穏やかなものになる。逆に、脳の働きが悪ければ心は乱れる。と。

 

脳というハードウェアが壊れていたり、正常に働けない状態ならば、うつや不安、イライラなど、負の感情に悩まされることになるのは自然なことではないのか。

 

実は、私はこの考え方を全面的に支持する立場です。そこで、まずは脳のハードウェアとシステムを理解しておきましょう。

 

◆ 組み立て前のパソコンのように・・・

 

「こんなに減っていて、よくボケないよな~」

 

知識がなく、数だけ聞くと心配になってしまうと思いますが、私たちの脳の神経細胞は、生まれてからずっと減り続けています。

 

その数、なんと1日に10万個。二十歳をすぎると、少しビビッてしまうほど脳の神経細胞は減り続けています。その一方で、胎児の脳細胞は、これほどの、驚くほどのスピードで増えていきます。

 

受精4か月で20~30g程度だった脳重量は、赤ちゃんとして生まれるころになると400g程度にもなります。

 

その間、1分間に25万個ものスピードで増え続け、誕生時、脳内には1000億個もの神経細胞がつまっています。それを1000億個も準備して生まれるわけですが、このときはまだ、部品をそろえたにすぎません。

 

例えるなら、組み立て前の自作パソコンのようなものなのです。

 

◆ ネットワークの構築

 

日本語がペラペラな私ですが(笑)、韓国語や中国語など、外国語はさっぱり意味がわかりません。私にとっての外国語とは、その言葉を母国語にしている方には申し訳ありませんが、ほとんど雑音にすぎません。

 

そんな私に限らず、誰もがそうなのですが、生まれつき母国語が理解できたわけではありません。私が今聞く外国語と同じように、子供のころは意味もわからずに言葉を聞いていました。

 

そして、言葉にならない言葉を繰り返すことで、いつの間にか会話ができるようになりました。

 

話す、聞く、理解する。会話とは、これら異なる能力が組み合わされることで成り立ちますが、これが脳の最大の特徴です。個々の細胞が単独で働くのではなく、多くの神経細胞が連絡したネットワークとして機能します。

 

そのため、この神経細胞は、赤ちゃんとして生まれて以降は増えることがありませんが、生まれてから出会うありとあらゆる情報を伝達するため、神経細胞と神経細胞のつながりは劇的に増えていきます。

 

◆ 頭が大きくなるのは?

 

生まれてから神経細胞が増えることはない。

 

なのに、赤ちゃんから子供、大人へと成長するうちに、私たちの頭は大きくなります。

 

その理由は〝つかいこんだ〟ことで〝つながった〟からです。

 

私たちの脳は、さまざまなことを経験・学習することで神経細胞と神経細胞がどんどんつながります。赤ちゃんが2~3歳になるころ、ひとつの神経細胞が3万もの神経細胞につながります。

 

単に、1000億の神経細胞が、そのひとつひとつが3万もの枝を増やすわけですから、その体積が増えることは想像できることでしょう。

 

単純計算で、1000億×3万ですから…、すいません、単位が大きすぎてわかりませんが、1000兆を超える単位になります。枝葉で増えた神経細胞のつながりも、これだけの数になれば相当な体積となります。

 

また、小学校から中学、高校と、私たちはさまざまな経験を積み重ねますから、それに応じて神経細胞のつながりはさらに増えることになります。

 

神経細胞は増えないのに、頭が大きくなるのはこういった単純な理由だったのです。

 

◆ 脳の基本構造をつくるニューロンとシナプス

 

神経細胞とは、木に例えることができます。

 

ひとつの神経細胞から、長い軸索と呼ばれる幹が伸びています。この軸索の先端も木の根っこのように、いくつもに枝分かれしています。

 

また、軸索の反対側は木の枝といったところで、複雑に短く分岐していて、樹状突起と呼ばれています。樹状突起という枝をもった、ひょろひょろの幹と根をもった木。

 

これがニューロンと呼ばれるまとまりです。

 

また、ニューロン同士はお互い近くにあるものの、くっついてはいません。このすき間を埋めているのがシナプスで、ここに、記憶、認知、学習した情報が蓄えられます。

 

そして関連したもの同士でグループをつくり、また、学習などを繰り返すことで、シナプスのつながりがどんどん強化されることになります。ニューロンは、隣接するニューロンの樹状突起にシナプスを経由して接続しあうことで、情報のやりとりが行われています。

 

◆ 電気シグナルと伝達物質

 

糸電話を使ったとき、離れたところでもはっきり声が聞こえて驚いたことがあります。糸を通じた振動は、空中を伝わる振動よりしっかり伝わるため、思っている以上に強く音を伝えてくれます。

 

一方で、脳における情報伝達は、電気シグナルと神経伝達物質のふたつが利用されています。電気シグナルで情報伝達というとピンときませんが、糸を通じた振動で言葉が聞こえるわけですから、それよりは確実な情報伝達なのかもしれません。

 

また、神経伝達物質とは、神経細胞から別の神経細胞に送る「言葉」にあたります。

 

この伝達物質は、ニューロンとニューロンの間にあるすき間、シナプスを通り、標的の神経細胞に届きます。このとき、それぞれの伝達物質は、それを専門に受けとる受容体にドッキングします。

 

これで、情報が標的の神経細胞に伝えられたことになります。するとふたたび、この情報は電気シグナルに形を変え、軸索(神経細胞の幹)を伝わり、末端の根っこの部分まで届けられます。

 

そしてまた、この先がシナプスですから、担当の伝達物質が放出され、標的の神経細胞にむけて届けられることになります。

 

脳内における情報伝達とは、基本的にこの繰り返しが連続して行われます。これが、数万~数億という、神経細胞の規模でおきることになります。

 

◆ 脳の活動とは・・・

 

数万~数億という、無数の細胞内を次々と電気シグナルが流れていく。脳内でおきるこの回路の流れこそ、記憶であり、思考です。コンピューターの回路と同じように、電流が流れ動いている。それが、ハードウェアとしての脳の活動です。

 

そして、とても不思議なことなのですが、この電気シグナルの流れが神経細胞の連係プレーを生みだします。聴覚からとどく情報を理解し、その情報への適切な回答を言葉として発する。

 

 

これほどの複雑な処理を苦もなく行えるからこそ、私たちはうつや不安、イライラといった感情に苦しむことになるのかもしれません。

 

たとえば、サルは、自分より強いとわかっているサルが近づくと、自分は弱いサルとして振舞います。逆に、自分より弱いサルが隣にくると、強いサルとして振舞います。

 

また、初めて会ったサル同士は、まずはどちらも強いサルとして相対します。さらに、基本的にひとりのとき、サルは強いサルとして振舞います。

 

サル以上に複雑なのが人間関係。悩んでしまうのも当然ですね。

 

 

第二章 心が生まれる仕組みは?

 

鶏が先か、卵が先か。

ここからお話することは、そのレベルのことです。

 

ですが、この理解があるかどうかで、うつに対する認識は大きく違ってきます。そして、その説明モデルとして、この章では、脳科学の基礎的なお話をご紹介します。そこで、まずは脳の働きをもとに、おおざっぱに下記のようなふたつにわけて説明を進めていきます。

 

まず、みなさんよくご存じの右脳左脳ですが、この脳が理性・知性の働きをするところから「知性脳」と呼びます。

 

そして、この右脳左脳をとっぱらうと、その下に見えてくるのが大脳辺縁系です。ここは、喜怒哀楽を担当する脳であることから、こちらを「情動脳」と呼ぶことにします。

 

 

◆ わかっていないのに…、ドキッとするのは?

 

ヘビを見て、ドキッとした。そんな経験は、誰にでもあると思います。このときの情報は、まずは情動脳に届けられます。

 

そして、この情動脳には、五感からの情報を「快(安全)」「不快(危険)」か、評価をする扁桃体に送られ、その判定は瞬時に視床下部に送られます。

 

視床下部は自律神経の司令塔ですから、扁桃体の評価が不快(危険)ならば、瞬時にアクセルの神経(交感神経)が緊張し、いつでも逃げることができるよう、また、いつでも戦えるように体が緊張することになります。

ここで重要なことはふたつ。ひとつは、このとき、私たちは「ヘビを見た」とわかっていない。ということです。

 

「え~、どういうこと?」

 

そんな声が聞こえてきそうですが、でも、このとき私たちは「ヘビみたいなもの」を見ただけにすぎません。その証拠に・・・

 

「ヘビだと思ったらヒモだった」とか「ホースだった」という経験、していますよね。

 

もうひとつの重要なポイントは、ここで「不快」という〝こころ〟が生まれていることです。

 

◆ 質問が届くと・・・

 

「ヘビみたいなもの」

 

そんな情報でも、扁桃体は「不快(危険)」と評価し、その情報を視床下部に送りますが、それも当然でしょう。

 

「ヒモだと思ったらヘビだった!」

 

これでは困ります。私たちに限らず、動物が生き抜くには、なにより危険を回避することが優先されますから。ですから、「ヘビだと思ったらヒモだった!」でいいのです。なにより、リスクを最大限に避けることが優先されます。

 

話を元に戻すと、「ヘビみたいなもの」という情報とともに、「ビクッ!」という体の反応、そして扁桃体による「不快」という評価は知性脳に届けられます。

 

そして、「なぜ、不快なのか?」という質問が生まれ、右脳左脳がそれを確認することになります。

 

このとき、もし「ヘビだ!」ということになれば、扁桃体の「不快」という評価に「怖い」という意味づけがなされます。逆に、「ヒモだった!」なら、その情報が扁桃体に届けられことで扁桃体は「快(安全)」の評価をし、安心することになります。

 

また、その情報が視床下部に届けられ、交感神経の緊張はほぐれることになります。

 

◆ 心は、私たちが気づく前に生まれています!

 

「ヘビだと思ったらヒモだった!」

このことから、次のことがわかりました。

 

・ヘビだとわからないのに「不快」という心が生まれていた

・扁桃体が強く働いたとき、知性脳の働きはマヒしていた

 

このことがわかった上で、次のようなシチュエーションはどうでしょうか。

道を歩いていたら、周りの草むらで「ガサガサガサ」という音がして身がすくんだ!

 

このとき、「ガサガサガサ」という音が扁桃体により「不快」と評価され、その情報が視床下部に送られ交感神経が緊張しました。ほぼ、ヘビの時と同じですね。

 

次に、この情報が知性脳に送られ「なぜ不快?」か確認することになります。そのとき、あなたはどんなことをイメージするでしょうか?

 

私なら、草むらということで、「ヘビか?」とか「ネコかもしれない…」、「捨てられた子猫がいたことが…」みたいな、過去に経験した記憶を探ることをするでしょう。

 

実は、扁桃体が反応すると、それに関連する記憶が呼び覚まされることになります。

 

◆ 赤ちゃんを見ていてあきないのはなぜ?

 

脳内における情報の流れは、ほとんど無秩序といえるほどランダムです。また、草むらで「ガサガサガサ」と音がしたとき、「ネコか?」「子猫かも?」「ヘビだったら…」などの連想もランダムに行われます。

 

そしてそのランダムな連想をひとつに束ねるのも記憶であり経験です。

 

「この辺りだと危険な獣がいるとは思えないが、念のために石でも放り投げて様子を見たほうがいいだろうな~」と、その草むらから安全と思われる距離をおいて軽く石を放り投げたりする。だからこそ、赤ちゃんを見ていると、いつまでたってもあきません。お解りになるでしょうか?

 

まず、ヘビの時と同じように、私たちは赤ちゃんを見たとわかる前に〝こころ〟が生まれています。

 

「あかちゃんみたいな」情報は扁桃体に届けられ、「快」の評価を得ます。これが知性脳に届き、「赤ちゃん」が確認されます。

 

このとき、すでに扁桃体が「快」の記憶を探りはじめます。また、赤ちゃんと確認された情報も扁桃体にフィードバックされ、ふたたび「快」の評価を得ます。そしてまた、赤ちゃんに関連した記憶が呼び覚まされることになります。

 

たとえば、この赤ちゃんが友人の子供だったなら、あなたが呼び覚ます記憶は「自分の子供」や「兄弟の子供」、「近所の赤ちゃん」などでしょう。もしかしたら、アルバムで見た、奥さんが赤ちゃんだったころの写真かもしれません。

 

いずれにしても、こういった記憶は呼び覚まされると、その情報はその都度扁桃体に送られます。そして、それらはすべて「快」の評価を得ることになります。

 

ず~~~っと「快」の評価が続くわけですから、楽しくなります。また、赤ちゃんですから、どんどん可愛くなります。

 

抱っこする、頬ずりをしたり、小さな手を握る。

可愛いから触れたくなり、触れるとなお可愛くなる。

 

いつまでもいつまでも、赤ちゃんといると飽きないのはこういったメカニズムが働いているからなのです。

 

 

第三章 栄養が足りないと何がおきるのか?

 

人は聴覚から7%、触覚から3%、嗅覚から2%、味覚から1%の情報を得ているそうです。そして、残りの87%は何かというと、それは視覚です。だからなのでしょうか?

 

私は20年くらい前から、「ほとんどの人が栄養失調!」とお客様にはお伝えしてきました。また、それを前提に、自分でもサプリメントをとっていますし、とくに妊婦さんや授乳中のお母さんには栄養の重要性をお伝えしてきたつもりです。

 

ですが、それでも視覚からの情報、今の野菜は「見た目!」は立派ですから、いくら食材の栄養価が下がっているからといって、腹に落ちないのでしょうね。

 

◆ まずは、野菜と果物を確認しておきましょう!

 

野菜に含まれている栄養素がどれだけ下がっているのか、文部科学省が発行している『日本食品標準成分表』で確認してみましょう。

 

まずは1982年の4訂版と2000年の5訂版の数値です。

 

野菜100グラムあたりのビタミンCの含有量が20年前と比べてニンジンは7㎎から4㎎に、トマトは20㎎から15㎎、ほうれん草は65㎎から35㎎に下がっていました。

 

その他の野菜も例外なく、ブロッコリー160㎎から120㎎、チンゲンサイ29㎎から24㎎、大根15㎎から12㎎、モヤシ16㎎から8㎎、パセリ200㎎から120㎎、ニガウリ120㎎から76㎎、ニラ25㎎から19㎎、小松菜75㎎から39㎎といった具合です。

 

これはビタミンCだけの問題ではなく、ビタミンAや鉄分、カルシウムなど、栄養素の含有量は全般的に下がっています。また、最初の『日本食品標準成分表』が発表された1950年当時と比べると、少し怖くなります。

 

たとえば、100gあたりの量を1950年と2010年で比較すると、ほうれん草のビタミンC含有量は150㎎が35㎎と約5分の1。鉄分も13㎎が2㎎と、こちらも6分の1以下に減っています。

 

さて、ここで視覚に訴えたつもりですが、実際に野菜や果物を見ても栄養は見えませんからやっかいです。ですから、あとふたつ、栄養が不足しているという情報をご紹介します。

 

ひとつは、栄養素が調理の過程でさらに減ること。炒めたりゆでたりと、熱を加えれば加えるほど、ビタミンが壊れて減ってしまうことを忘れないでください。また、野菜や果物の栄養価の減少は、農薬や化学肥料の利用が一因とされています。これは海外の果物に顕著のようです。

 

たとえば、1950年代アメリカのリンゴに含まれるビタミンCは400㎎、一方で、現代のリンゴには4㎎と、おおよそ100分の1にまで激減しています。また、1950年代のカナダではブロッコリのカルシウムは現代の5倍含まれていたそうです。

 

輸入物の果物なども、栄養価が減っているのは確かなようです。

 

◆ 新型栄養失調

 

カロリーは足りているのに、ビタミンやタンパク質、ミネラルが不足して体に不調をきたすことを「新型栄養失調」と呼ぶそうです。見かけは問題のない野菜や果物ですが、その実、ビタミンやミネラルの含有量は低下しています。

 

また、ファーストフードや冷凍食品、コンビニ弁当、インスタントラーメンなど、腹を満たすことはできたとしても、もともと栄養価が低い食事で腹を満たすことが増えていますから、新型栄養失調になるのも自然なことです。

 

タンパク質は筋肉や血液、臓器をつくる材料です。それが不足すれば、貧血や脳出血、結核、肺炎、骨折などさまざまな病気の原因になります。筋肉が不足して転びやすくなったり、疲れやすくなったりと、人によりさまざまな不調がおこります。

 

これが全身レベル、臓器レベルの不調ですが、分子レベルでもさまざまな不調がおこることになります。

 

それでは、栄養不足が脳にどのような不調をもたらす可能性があるのか?それをひとつずつ確認してみましょう。

 

◆ アミノ酸不足!

 

伊勢神宮では、原則として20年ごとに遷宮が行われています。このとき、一万本以上のヒノキ材が用いられるため、以前からヒノキの確保に苦労してきたそうで、平成25年の遷宮では、ヒノキ不足から遷宮史上初めて、青森産のあすなろが用いられました。

 

この遷宮が行われる本当の理由は知りませんが、私はとても日本的な考え方から行われているのではないかと思っています。形あるものは必ず壊れる。あらゆるものは生じそして滅するのです。このことわりが「諸行無常」ですが、台風などの自然災害も見据えて、この遷宮が行われてきたのではないでしょうか。

 

同じように、私たちの体や脳も新陳代謝で入れ替わっています。そして、タンパク質は体内に貯めておけませんから、常に新しく補給しなければなりません。

 

なのに、新型栄養失調でお解りのとおり、タンパク質の摂取量が不足している人が増えています。そもそも、タンパク質とはアミノ酸の集合体のことです。この集合体が常に、体内で分解と合成を繰り返し、アミノ酸は絶え間なく消費されています。

 

また、10万種類以上あるといわれているたんぱく質ですが、そのいずれもが、わずか20種類のアミノ酸の組み合わせや、配列順序に違いによってつくられています。

 

このアミノ酸のうち、体内で合成できない9種類を「必須アミノ酸」と呼びますが、貯めておくことができません。ですが、毎日使われますから、当然、毎日、食事から摂らなければいけません。

 

アミノ酸は、体はもちろんですが、脳のプラットフォームを構成する栄養素です。そのアミノ酸が不足したなら、脳の機能に影響を与えることに疑いはありません。

 

◆ アミノ酸とともにプラットフォームとして重要なのは?

 

動物除けの電線が切れて川に…、亡くなった人もいた事故ですからご存知の方がほとんどだと思います。

 

この動物除けの電線は裸線ですから、さわるとピリッとしびれます。電気が漏電する仕組みですから、触ると電気が伝わり感電することになります。一方で、私が言うまでもなく、電気コードは漏電がおきないような構造になっています。

 

実は、脳の神経細胞も絶縁体で囲まれています。そして、その絶縁体とは脂肪です。水分をのぞくと、脳の70%は脂肪でできています。この事実だけで、脳における脂肪の重要性は想像できますが、実際、脂肪は脳の働きにとても重要な役割を果たしています。

 

そのひとつが軸索を覆うミエリン鞘で、このミエリン鞘はその80%が脂肪でできており、軸索を流れる電気シグナルという情報が漏電しないよう、絶縁体の働きをします。

 

もし、脂肪が少なければミエリン鞘は薄くなり、電気シグナルは漏電します。すると、情報の伝達スピードは遅くなりますし、十分な情報量が軸索の末端に届かなくなります。

 

要するに、脂肪が不足してミエリン鞘が薄くなり漏電する。すると、頭の回転が悪くなるのです。

 

◆ キャッチャーミットはカギ穴のようなもの!

 

情報は軸索の末端まで電気シグナルで伝わります。そこから標的の神経細胞の間にある〝すき間〟がシナプスですが、ここでの情報伝達は神経伝達物質が担当します。

 

電気シグナルが伝達物質というボールに形を変え、シナプスをわたって標的の神経細胞の表面にある受容体というキャッチャーミットにおさまる。これで、神経細胞から神経細胞へと情報が伝わることになり、そこでまた、情報は電気シグナルとして軸索の末端まで伝わることになります。

 

この受容体というキャッチャーミットの土台が神経細胞膜で、これが柔らかいことがとても重要なポイントとなります。なぜならば、伝達物質というボールと、それを受け止めるキャッチャーミットという受容体はカギとカギ穴の関係だからです。

 

伝達物質はそれぞれ形が違います。形が違うボールですから、それを受け止めるキャッチャーミットは、その伝達物質専用の形(カギ穴)になります。ここに、他のボールは絶対に入りません。

 

つまり、神経細胞の膜は、伝達物質に合わせて形を変えたキャッチミットを用意する必要があります。そのためには、神経細胞の膜が柔らかな方が有利なことは確かです。逆に、もし膜が硬いと、伝達物質を受けとりにくくなりますから、頭の回転が悪くなります。

 

◆ DHAが脳に良い。この理屈は・・・

 

水に好きな色の絵の具を溶かし、そこにPVA(ポリビニルアルコール)配合と記載のある洗濯用水ノリを混ぜ、最後にホウ砂(シャ)を入れると・・・、子供は大好き(大人はちょっと気持ち悪い)な、あのスライムができます。

 

柔らかい膜とは、形を自由に変えることのできるこのスライムのようなものなのかもしれません。そして、この柔らかい膜の原料は魚の脂(DHA)から、硬い膜は肉からとることができます。では、その理屈をご紹介しましょう。

 

人の体温は36.5度くらい。最近は低体温の人も増えていますが、まあ、それでも35.5~37.0くらいの範囲でしょう。

 

続いて肉ですが、鳥、牛、豚の体温は、空を飛ばない鶏が42.0度、牛が39度台、豚が38度台です。これらの脂は、この体温で安定していますから、それより低い温度では固まることになります。

 

肉料理を作った後のフライパンに、白い脂が固まっていることがありますが、36度台の私たちの体でもそれと同じことがおこります。

 

一方で魚ですが、その体温は水温です。となると、魚の体温はほとんどが30度以下でしょう。その温度で安定している脂ですから、私たちの体内に入ればしっかり溶けてくれます。

 

魚の脂(DHA)で頭が良くなる。これは事実で、その理由とは、柔らかな細胞膜がつくられ、伝達物質をよりスムーズにキャッチできるようになるからだったのです。

 

DHAは青魚に多く含まれますが、妊娠中に十分な青魚を食べたお母さんから生まれた子供と、そうでないお母さんから生まれた子供の知能を4歳になってから比べたところ、前者から生まれた子供のIQが高かったという報告があります。

 

◆ セロトニン不足は気分の低下をもたらすことになる!

 

穏やかな感情をたもつ物質とされるのが、伝達物質のセロトニンです。

 

そのセロトニンを脳内でつくるスピードは、男性が女性より5割ほどはやく、そうなると、一生のうち、うつ病にかかる割合は、女性が10~25%、男性が5~12%と、女性が男性のほぼ倍であることも納得してしまいます。

 

また、セロトニンは、エストロゲンレベルが低下するにつれて下がることも知られています。そして、この女性ホルモンのひとつ、エストロゲンレベルが低い時とは、生理前や更年期、閉経期など。となると、やはり納得してしまいます。

 

なぜならば、生理前症候群や更年期障害では、気分の落ち込みや緊張、イライラ、無気力などの精神症状が特徴のひとつだからです。その意味で、セロトニンレベルの低下は、マチガイなく気分の低下、うつ症状をもたらすことになるのでしょう。

 

ならば、セロトニンレベルを上げることで、気分の向上をもたらす可能性がありますし、すでにそういった報告や論文は世界中で発表されています。

 

◆ セロトニンはどこからやってくるのか?

 

アミノ酸のひとつ、トリプトファンからセロトニンが合成されます。ですから、原料としてトリプトファンが必須なのですが、残念ながらこの物質は体内で合成できない必須アミノ酸。

 

また、すでにご紹介したようにアミノ酸は貯めておくことができませんから、毎日、確実に食べ物からとらなければなりません。というと、またまた更年期障害のお客様の話を思いだしてしまいます。

 

というのも、更年期障害が続く方々は、食事量が少なかったり、おかずが少ないとかテキトウだったり、弁当や冷凍食品、お惣菜のような出来合いばかり食べていたり、好きなものばかり過食していたりと、そのほとんどが食に問題を抱えている方々だったからです。

 

セロトニンの合成には、原料としてトリプトファンがあることが必要条件です。しかし、これでは十分条件を満たすとはとても言えたものではありません。なぜなら、セロトニンの合成には次のような流れが必要だからです。

 

まず、トリプトファンは5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)に変換されます。このとき、葉酸とナイアシン、鉄が補酵素として必要です。そしてこの5-HTPがセロトニンに変換されるわけですが、ここではビタミンB6が必要です。

 

つまり、セロトニンの合成の十分条件とは、原料としてトリプトファンが必要なことはもちろん、補酵素として、葉酸とナイアシン、ビタミンB6、鉄が必要なのです。

 

◆ ストレスと栄養

 

セロトニンに限らず、脳はストレスがかかるとさまざまな伝達物質やホルモンをつくり、気分のアップダウンに対処します。つまり、どんな伝達物質がどれだけの量流れるのかで、心の状態が決まってきます。

 

たとえば、ノルアドレナリンは、脳内でもっとも分泌されている伝達物質です。この伝達物質は外部からの攻撃やストレスに対抗して分泌され、交感神経を緊張させるように働きます。

 

心臓の拍動を強め、筋肉に大量の血を送り、いつでも逃げることができるように、逆に、いつでも戦えるように準備を促す。そういった働きから、怒りのホルモンと呼ばれることもあります。

 

そんなノルアドレナリンは、フェニルアラニン → チロシン → ドーパ → ドーパミン → ノルアドレナリンという流れで合成されますが、セロトニンの合成と同じように、そこではビタミンやミネラルが補酵素として働きます。

 

フェニルアラニンがチロシンに変換するには、葉酸とナイアシン、鉄が必要です。チロシンがドーパに変わる時、やはり葉酸とナイアシン、鉄が必要です。

 

ドーパがドーパミンに変わる時、ビタミンB6が。ドーパミンがノルアドレナリンに変わる時、ビタミンCが必要になります。

 

ストレスがかかればかかるほど、それに対抗するために伝達物質が必要になります。つまり、ストレスが多いほど、要求される栄養素の量も増えることになるのです。

 

 

第四章 脳科学から〝うつ〟を考える!

 

クリスマスになると、街のあちこちにイルミネーションが現れます。脳の働きとは、ある意味このイルミネーションのようなものかもしれません。

 

脳が正常な思考と穏やかな感情でいるとき、イルミネーションは誰もが目を奪われるような輝きを放ちます。このとき、部品(栄養)が足りなかったり、ケーブル(脂肪)が漏電したら、その輝きは失せることになります。

 

このことからも、栄養素の不足は脳の働きを狂わせることに疑いはありません。それが、うつという症状で現れることは、私からすれば自然なことなのです。

 

これは、脳科学から考えても明らかなようです。

 

◆ うつは、赤ちゃんの時と違って・・・

 

なぜ、赤ちゃんを見ていてあきないのか?そして、赤ちゃんを見ているとき、どんな流れで心が生まれていたのか?カンタンに確認しておきましょう。

 

視覚からの情報は、まずは扁桃体に届けられ「快」か「不快」か、おおざっぱな評価を受けます。このとき、ヘビであろうと赤ちゃんであろうと、なんであろうと、まだはっきりわかっていません。

 

その情報が右脳左脳に送られて確認作業が行われ、その情報が扁桃体にフィードバックされ、それに関連する記憶が呼び覚まされます。それが赤ちゃんなら、記憶が扁桃体にフィードバックされるたびに「快」の評価が続くことになりますから、脳は快感で満たされることになるわけです。

 

うつとは、この逆だとは思えないでしょうか?

 

◆ 表情とは?

 

実は、表情とは扁桃体の〝評価〟の表出です。扁桃体が「快」の評価をしていたなら、表情は笑顔で豊かになります。

 

逆に、「不快」の評価がなされたとき、表情はとても乏しくなります。そして、うつっぽい人の表情は、マチガイなく乏しくなっています。

 

ならば、うつの人の扁桃体は、常に「不快」という評価を発し続けていることになります。その理由はなぜでしょうか?

 

ヘビを見たとき、それがわかっていないのに扁桃体は「不快」という評価をします。そして、その情報は瞬時に視床下部に送られ、それが交感神経の緊張を瞬時に促します。

 

ポイントは、扁桃体とつながる「視床下部」にあったのです。

 

◆ ホルモンの司令塔!それも・・・

 

すでにお解りのように、視床下部は自律神経の司令塔です。

 

つまり、自律神経は視床下部によってコントロールされていますから、そこに扁桃体から「不快」という評価が送られれば、必ず体は戦闘態勢をとります。これは、いつでも逃げることができるように、そしてまた、いつでも戦えるようにという体の備えです。

 

実は、視床下部は自律神経の司令塔ですが、ホルモンの司令塔です。さらに、視床下部は本能の中枢でもあります。そして、一番重要な本能とは「食欲」に他なりません。食べなかったら死んでしまいますから、これも当然でしょう。

 

ここで更年期障害のお話を思いだしてください。更年期障害が続く人たちは、食にあきらかな問題を抱えるケースがほとんどです。このことから、次のことが想像できます。「不快」という扁桃体からの情報から、交感神経が緊張し戦闘態勢をとっている。このとき、体はのんびり食事などできない体制です。

 

また、女性ホルモンは、リラックスしていてはじめて正常に働きます。戦闘態勢をとっているからこそ、ホルモンの働きと「食欲」という本能の働きにも悪影響がでてしまった。これが更年期障害が続いてしまう原因です。

 

◆ 負のスパイラルが続くと・・・

 

現実問題として、ほとんどの人は「新型栄養失調」であることに私は疑いをもちません。そして、もし栄養不足ならば、その情報は扁桃体に届けられます。

 

そして、このときの評価は「不快」であることはとても自然なこと。また、その「不快」という評価は、それが解消されるまで続くことになるのも自然なことです。

 

冒頭の斎藤家は、お母さんが更年期障害となり、スーパーのお惣菜や冷凍食品と、どんどん食事内容が悪化していました。そのため、扁桃体からの評価が斎藤さんのうつ症状も悪化させていったのでしょう。

 

そして重要なポイントは、「栄養の不足は、自覚できないこと」です。

 

赤ちゃんの話でお解りいただいたように、扁桃体の評価は、それに関連する記憶を呼び覚まします。赤ちゃん(みたい)だから「快」であり、ヘビ(みたい)だから「不快」です。が、栄養不足はそれが自覚できませんから、目に入ったことに「不快」という情報を重ねることになります。(情報量の87%が視覚なため)

 

これが、とてもやっかいな状況を生みだすことになります。

 

◆ わからないから、反応してしまう!

 

下図の情動脳に扁桃体があります。そこで「不快」と評価された情報が右脳左脳に届き、そこで「不快」の理由が確認されます。ヘビ、赤ちゃん、冷たい風、注射が痛いなどがそれに当たります。

 

しかし、私が説明するまでもなく、「栄養不足」は自覚できません。すると、そこでおきたことに人は〝反応〟します。

 

「ご飯をつくらなきゃ!」そう思っても、そこに不快という情報が貼りつきますから、つくれません。

 

「ご飯はなに?」そう、ご主人が気軽に声をかけても、そこに不快という情報が貼りつきますから、「自分がつくるわけでもないのに、ホント、うるさいやつ!」と思ったり、

 

「たまにはあなたがつくればいいじゃない!」、「メニュー聞いて気に入らなかったら食べないつもりなの‼‼」みたいな反応をすることになります。

 

その理由もすでにお解りだと思います。扁桃体がいったん反応すると、それに関連する記憶が呼び覚まされるからです。

 

繰り返しますが、栄養不足による「不快」という評価は自覚できません。ですから、このご主人が目に入ったケースでは、ご主人に関連するイヤな記憶が呼び覚まされます。

 

「ご飯なに?」というこの言葉でも、たとえばご主人のお母さんで苦労した経験があるのなら、「文句があるのなら、お母さんにつくってもらえばいいでしょ!」みたいな反応をすることになるわけです。

 

◆ うつと更年期症状

 

食欲とは、「必要な栄養をすべてとれ!」という本能の叫びです。決して、腹を満たせとお腹に詰め込む欲求ではありません。その本能が満たされなければ、脳の栄養状態が悪くなれば、それは私たちの生存に関わる最大の危機。その情報を扁桃体が「不快」と評価し続けることは自然なことです。

 

そしてそれが知性脳に送られ続けるわけですから、知的・理性的な行動に影響が現れます。それは、「なぜ不快なのか?」という問いに、知性脳が明確な理由を見つけることができないからです。

 

そのため、五感からの情報すべてに、いちいち不快という情報が貼りつくことになります。考えても、そこに不快という情報が貼りつきますから、いつまでも考えがまとまりません。

 

斎藤さん親子も「メニューを決めることができなかった」と口にしていました。また、掃除や洗濯などが頭に浮かんでも、なぜか動く気にならず、横になったまま一日が過ぎていくことが度々だったとも言います。

 

このように、不快という情報が知性脳の決断や判断の力をマヒさせてしまいます。

 

また、うつ病や更年期障害の方々は、不定愁訴と呼ばれる身体症状を訴えるケースがほとんどですが、その理由もご理解いただけたことでしょう。

 

視床下部から扁桃体に向けられた「栄養が足りないよ!」という情報は、瞬時に「不快」という情報として視床下部にフィードバックされ、交感神経が緊張することになります。

 

そしてこの反応も、栄養状態が改善するまで続くことになります。ならば、良く眠れないとか、途中で目があくなどの睡眠障害はもちろん、頭痛や肩こり、胃腸症状など、さまざまな不調に悩まされることは自然なことではないでしょうか。

 

 

終わりに

 

脳の神経細胞は、その結びつきを強化するため他の神経細胞とのつながりを増やします。そのため、体積が増えるために、神経細胞が減っていくのに頭が大きくなる。そんな話をご紹介しましたが、本当はそれだけではありません。

 

実は、もっとも増える細胞とはグリア細胞で、その数は神経細胞のおおよそ10倍にもなります。そして、そんなグリア細胞の役割は、神経細胞に栄養を与え、成長や再生を促すというものです。

 

最後に、医術の祖、ヒポクラテスの言葉をご紹介しましょう。

 

「食べ物で治せない病気は、医者でも治せない」

「食べ物について知らない人が、どうして人の病気について理解できようか」

 

栄養が足りなかったなら、治るものも治らない。

 

これは、とても自然なことなのです。